会保険の適用拡大 

社会保険適用の意義

働く人には、公的な保険制度により医療と年金が保障されています。この健康保険と厚生年金を総称として「社会保険」と呼ばれています。

その中で、年金制度は、退職後や大けがで障がいを負ったとき、一家の大黒柱がなくなったときに対して社会全体で事前に備え、所得保障を行う支え合いの仕組みです。現在の仕組みとしては、定年退職がある会社員や公務員に対して、老後などの所得保障をする厚生年金があります。そして、20歳以上の全国民が加入する国民年金があります。国民年金を受け取るときは「基礎年金」と呼ばれます。

年金は二階建て構造となっており、厚生年金が適用されると自動的に国民年金にも適用され、両方の年金が受け取れる一方、保険料負担は会社と折半となります。そのため、厚生年金に適用されると給付と負担の両面で国民年金よりも有利になります。

保険料と年金額のモデルケース(40年間)※金額は月額
保険料と年金額のモデルケース
(40年間)※金額は月額

社会保険が適用されるとこのようなメリットが!

  • 原則65歳に達したら、全国民共通の基礎年金に加えて、報酬に比例した厚生年金を受給することができる!
  • 障害がある状況になった場合には「障害厚生年金」、また、死亡した場合には遺族に対する「障害遺族年金」を受給することができる!
  • 病気やケガ、出産によって仕事を休まなければならない場合に、「傷病手当金」や「出産手当金」を受給することができます。

問題はすべての働く者に適用されていないこと

企業の雇用主には、一定の条件以上で働く労働者を社会保険に適用させる義務があります。しかし、下の図にある5つの要件をすべて満たさなければ適用されないという高いハードルがあります。また、個人事業所では業種によって適用されるかどうかが異なります。そのため、週4日・1日4時間など短時間勤務の人や個人事業主などは、要件を満たさないため、国民年金のみになります。この場合、老後や障がいを負ったときなど、基礎年金しか受け取れません。

働き方や勤め先の違いによって、厚生年金に適用されるかどうかが決まるのは理不尽です。

短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大の概要
短時間労働者に対する
被用者保険の適用拡大の概要

※2016年10月から、社会保険の対象者が拡大され、従業員501人以上の企業で週20時間以上働く方などが対象になりました。さらに、2017年4月から、500人以下の企業も労使合意に基づき、企業単位で短時間労働者への適用拡大が可能となっています。

社会保険のさらなる適用拡大を

2020年通常国会に年金関連法案が提出されました。しかし、本来撤廃すべき企業規模要件は段階的に引き下げとなるなど、小幅な見直しにとどまっています。企業規模要件の撤廃をはじめ、他の要件についても見直しが必要です。

連合は、すべての働く人に社会保険を原則適用させる制度に改める方向での検討を求め、取り組みを進めていきます。